親知らず(おやしらず)とは、大臼歯(大人の奥歯)の中で最も後ろに位置する歯であり、第三大臼歯が正式な名称で、智歯(ちし)とも呼ばれています。
親知らずは永久歯(大人の歯)の中で最後に発育します。永久歯は通常15歳前後で生え揃いますが、親知らずは生える時期が概ね10代後半から20代前半であり、親に知られることなく生えてくる歯であることがその名前の由来だとも言われています。
親知らずは歯肉に部分的に被ったままになることにより不潔になりやすく、歯肉の炎症を起こしやすい状態となってしまいます。これを智歯周囲炎(ちししゅういえん)と呼び、20歳前後の人に発生する頻度の高い疾患です。
智歯周囲炎が周囲の軟組織や顎骨(がっこつ:あごの骨)に広がると顔が腫れたり、口が開きにくくなったりすることがあります。この智歯周囲炎になった場合は、抗菌薬(化膿どめ)や消炎鎮痛薬(痛み止め)の投与、さらにはうがい薬などを併用して炎症を鎮めた後、歯肉弁切除(被った歯肉を切除)を行い、様子を見るといった場合もあります。
しかし、親知らずの生える方向が悪かったり、炎症をくり返しているような場合は、抜歯することが適当と考えられます。
親知らずによる強い痛みを感じている方が、「早く痛みから解放されたい」という思いから抜歯の覚悟を決めて来院されることがあります。
しかし実は、その状態ですぐに抜歯を行うことはできません。親知らずに限らず、炎症が激しい状態では麻酔が効きづらいのです。まずはその炎症を和らげるために親知らずの周辺をきれいに清掃し、お薬を飲んでいただきます。症状が落ち着いた時点で、しっかりと麻酔をして抜歯を行っていきましょう。
親知らずの生える方向が悪かったり、炎症をくり返しているような場合は、抜歯することが適当と考えられます。抜歯の必要性を正しく診断するには、歯や骨の奥行きや幅、厚みといったデータを立体画像で詳細に把握できる歯科用CTが有効です。
当院では歯科用CT設備を導入しており、精度の高い診断と精密な処置に役立てています。
親知らずは適正に生えないことが多く、不要なので抜いてしまうというのはいささか乱暴な話です。
親知らずだから全て抜くというのではなく、正常に生えて機能している場合や、手前の奥歯などが抜けてしまってない場合などはその部分を補うためのブリッジや入れ歯の土台に利用できるため、残しておいた方が良いこともあります。
食事は抜歯した歯とは反対側で咬むようにしましょう。指や舌で傷口に触れないよう、注意しましょう。ブラッシングは控えましょう。傷口をふさいでいる赤いゼリー状の物質(血餅)は、感染を防ぎ、治癒力を高めてくれる効果がある大切なものです。強いうがいなどによって剥がれてしまうことがあるので注意しましょう。
※抜歯後は3日~1種間程度腫れが残ります。